春の訪れとともに和菓子店の店頭を鮮やかに彩る草餅やよもぎ餅。どちらもよもぎの爽やかな香りが特徴ですが、「名前が違うだけで同じもの?」と疑問に思うこともあります。実は、歴史的な背景や地方による呼び方の習慣など、知っておくと面白い違いが隠されています。その秘密を詳しく紐解き、選び方のポイントを整理しました。
草餅とよもぎ餅の違いは?名前・材料・食感を一気に整理
草餅とよもぎ餅は、現代の和菓子店ではほとんど同じものを指す言葉として定着しています。しかし、そのルーツを辿ると、使われていた植物の種類や時代背景に興味深い違いがあることがわかります。ここでは、呼び名が分かれている理由や、香り、食感の違いを決定づける要因についてわかりやすく整理して解説します。
そもそも「草餅」と「よもぎ餅」は同じもの?
結論から言うと、現代においては「草餅」と「よもぎ餅」はほぼ同じお菓子を指しています。しかし、その歴史は非常に古く、もともと「草餅」はハハコグサ(母子草)という植物を餅に練り込んで作られていました。平安時代頃にはすでに食べられていた記録がありますが、江戸時代に入ると、ハハコグサは「母と子を餅と一緒に搗(つ)く」というイメージが連想され、縁起が悪いとされるようになりました。
そこで代わりとして使われ始めたのが、繁殖力が強く生命力の象徴でもある「よもぎ」です。よもぎには邪気を払う力があるとも信じられていたため、行事食としても重宝されました。それ以降、よもぎを使った餅が一般的になり、現代ではよもぎを材料とした餅の総称として「草餅」という名前も使い続けられています。つまり、よもぎ餅は草餅の一種であり、現代ではその境界線はほとんどなくなっているといえます。
香りの出方は「よもぎの量」と「加工方法」で変わる
草餅やよもぎ餅の最大の魅力は、鼻に抜ける爽やかな磯のような香りです。この香りの強さは、練り込まれるよもぎの量と、どのような状態で加工されたかによって大きく左右されます。もっとも香りが強いのは、春先に摘んだ新鮮な生のよもぎを茹でて、そのまま餅に搗き込んだものです。野性味あふれる力強い香りが楽しめますが、下処理に手間がかかるため、専門店ならではの贅沢な味わいといえます。
一方で、手軽に作れる「よもぎパウダー」や「乾燥よもぎ」は、加工の段階で熱が加わるため、生のよもぎに比べると香りがマイルドになる傾向があります。しかし、乾燥タイプの中には繊維をしっかりと残したものもあり、これを使うと噛むたびによもぎの風味が広がります。よもぎの含有率が高いものほど色が濃い深緑色になり、香りも濃厚になります。選ぶ際は、色が鮮やかで自然な香りがしっかりと感じられるものを選ぶのがポイントです。
生地の配合で「もちもち感」と「歯切れ」が変わる
生地の食感は、ベースとなる「粉」の種類と配合によって決まります。伝統的な草餅の多くは、上新粉(うるち米を粉にしたもの)を使用します。上新粉で作られた餅は、適度な歯ごたえとコシがあり、歯切れが良いのが特徴です。昔ながらの少し固めのしっかりとした草餅が好きな方には、上新粉ベースのものが適しています。
対して、とろけるような柔らかさや、びよんと伸びる「もちもち感」を重視する場合は、白玉粉(もち米を加工したもの)やもち粉が配合されます。白玉粉が多く含まれると、時間が経っても固くなりにくく、子供からお年寄りまで食べやすい質感になります。お店によって、上新粉と白玉粉を独自の比率でブレンドし、独自の「もちもち感」と「歯切れ」のバランスを追求しています。自分の好みの硬さに合わせて選ぶと、より一層美味しく感じられます。
あんこの入れ方で呼び名が変わることもある
地域や和菓子店によっては、あんこの入り方や見た目の形で呼び名を変えることがあります。一般的に、あんこを中に包み込んで丸く形を整えたものを「草餅」と呼ぶことが多いです。これは、お祝い事や行事で配られる際に扱いやすい形として定着したと考えられます。
一方で、餅そのものを小さくちぎり、上に粒あんやこしあんを載せたり、きな粉をまぶしたりするタイプは「よもぎ餅」や「よもぎ団子」と呼ばれることがあります。特に、柏の葉で包んだり、串に刺したりするバリエーションも豊富です。呼び名に厳密なルールはありませんが、あんこが主役か、餅そのものの味を楽しむかというスタイルの違いが、名前の使い分けに現れることもあります。
草餅・よもぎ餅づくりに役立つおすすめ材料まとめ
自宅でおいしい草餅やよもぎ餅を作る際に、品質が安定していて扱いやすい材料を厳選しました。2026年現在の最新情報を反映したおすすめリストです。
| 材料名 | ブランド・特徴 | おすすめポイント | 公式サイトリンク |
|---|---|---|---|
| よもぎパウダー | 富澤商店(TOMIZ) | 粒子が細かく、餅に均一に混ざりやすいです。 | 富澤商店公式サイト |
| 乾燥よもぎ粉末 | 青森県産100% | 繊維が残っており、生のよもぎに近い強い香りが特徴です。 | Amazon.co.jp(参考) |
| 白玉粉 | 川光物産(玉三) | きめ細かく、つるんとなめらかな食感に仕上がります。 | 川光物産公式サイト |
| 上新粉 | 前原製粉(まるは) | 国産米を使用。コシのある伝統的な食感を作れます。 | 前原製粉公式サイト |
| こしあん | 橋本食糧工業 | 甘さ控えめで、よもぎの香りを引き立てる上品な味です。 | 橋本食糧工業公式サイト |
| つぶあん | 井村屋 | 小豆の粒がしっかりしており、食べごたえがあります。 | 井村屋公式サイト |
草餅とよもぎ餅を選ぶときのポイントと食べ方の楽しみ方
草餅やよもぎ餅は、材料や作り方によって楽しみ方が千差万別です。自分好みの逸品を見つけるためのチェックポイントと、最後まで美味しく味わうための工夫をご紹介します。香りと食感、そして食べ方のバリエーションを知ることで、いつもの和菓子がより特別なものに変わります。
香り重視なら「乾燥よもぎ」か「生よもぎ」かで選ぶ
よもぎの風味を何より大切にしたいなら、まずは「生のよもぎ」を使用している季節限定の商品を探してみてください。一般的に3月から5月にかけての旬の時期には、職人が手摘みしたよもぎを使った特別な草餅が登場します。フレッシュなよもぎはアク抜きなどの下処理が大変ですが、その分、一口食べた時の爽快感は格別です。
旬の時期以外であれば、高品質な「乾燥よもぎ」をたっぷり使ったものを選びましょう。乾燥よもぎは香りが凝縮されており、通年で安定した品質を楽しめるメリットがあります。原材料表示を見て、よもぎが上位に記載されているものや、表面に細かいよもぎの繊維が見えるものは、しっかりと風味が練り込まれている証拠です。香りの好みに合わせて選んでみてください。
食感重視なら「白玉粉・上新粉」の配合を意識する
食感の好みは人によって大きく分かれます。「昔ながらのしっかりした噛み応えが欲しい」という方は、上新粉がメインの草餅を選びましょう。上新粉が多いと歯切れが良く、お米の甘みとよもぎの苦味がしっかり噛みしめられます。
反対に「とろけるような柔らかさが好き」という方は、白玉粉やもち粉が多く含まれたもの、あるいは「求肥(ぎゅうひ)」のような質感のものを選んでください。最近では、翌日になっても固くなりにくいよう糖分を工夫した配合のものも多いです。購入する際に指で軽く押してみて、弾力があるか、それとも吸い付くような柔らかさがあるかを確認するのも、好みの食感に出会うためのコツです。
あん入り・あんなしで満足感と食べやすさが変わる
草餅を選ぶ際、あんこが入っているかどうかは大きな選択肢です。「あん入り」は、よもぎの清涼感と小豆の濃厚な甘みが合わさり、一つで高い満足感が得られます。こしあんはなめらかで上品に、つぶあんは小豆の皮の食感がアクセントになり、より素朴な味わいになります。
一方「あんなし」は、よもぎ餅そのものの美味しさをダイレクトに味わいたい時におすすめです。自分で好みの量のきな粉をかけたり、黒蜜を垂らしたりしてアレンジできるのが魅力です。また、あんなしのよもぎ餅は、甘くない食べ方(磯辺焼きなど)にも向いています。その時の空腹具合や、一緒に飲むお茶の種類に合わせて選ぶと、より充実したおやつタイムになります。
焼く・蒸す・冷やすで風味の印象が変わる
草餅やよもぎ餅は、食べる時の温度を変えるだけで表情がガラリと変わります。もし時間が経って少し固くなってしまったら、トースターで軽く焼いてみてください。表面がプクッと膨らみ、香ばしさが加わることで、よもぎの香りが一段と引き立ちます。これは焼きたての餅のような美味しさです。
また、蒸し器やレンジで軽く温め直すと、搗きたてのような柔らかさが戻ります。逆に夏場などは、冷蔵庫で短時間(30分程度)冷やして食べると、ひんやりとして喉越しが良くなります。ただし、冷やしすぎるとデンプンが固まってボソボソした食感になるため、冷やしすぎには注意してください。その日の気温や餅の状態に合わせて最適な食べ方を見つけるのも、和菓子を嗜む楽しみの一つです。
草餅とよもぎ餅の違いを知ると選び方がもっと楽しくなる
草餅とよもぎ餅の違いを辿ると、平安時代からの歴史や江戸時代の縁起担ぎ、そして現代の工夫に至るまで、深い物語があることがわかりました。名前の由来は違っても、どちらも「日本の春の香り」を大切にする心は共通しています。材料の粉の種類やよもぎの加工方法に少し意識を向けるだけで、これまで以上に自分好みの味に出会えるようになります。
上新粉のしっかりしたコシを味わうか、白玉粉の柔らかな伸びを楽しむか。あるいは、旬の生よもぎの香りを追いかけるか。知識というスパイスを加えることで、和菓子選びはもっとクリエイティブで楽しいものに変わります。ぜひ、お気に入りの和菓子店で、あるいはご自宅での手作りで、最高の一口を見つけてください。“`
